宇宙航空研究開発機構

突撃!きずな実験レポート 第24回(2014.05.21)

第24回目は「きずな」の現状について、現ミッションマネージャ事務代行の越川より紹介させていただきます。

確かな「きずな」とするために

宇宙航空研究開発機構 衛星利用推進センター 主任開発員 越川 尚清(こしかわ なおきよ)
宇宙航空研究開発機構
衛星利用推進センター
主任開発員
越川 尚清
越川 尚清(こしかわ なおきよ)
1993年東京理科大学理学研究科物理学専攻修了、同年に宇宙開発事業団(当時)入社、国際宇宙ステーションや小型ロケット用宇宙実験装置開発に従事。
2001年に東京工業大学(社会人大学院)にて博士(工学)の学位取得。
2012年4月よりJAXA衛星利用推進センターにて通信衛星「きずな」、「きく8号」を担当、現ミッションマネージャ事務代行。

 現在の「きずな」の状況を教えてください

『まだまだ元気いっぱいです』

 最近「「きずな」はいつまで使えますか?」と心配の声も頂いております。「きずな」は関係方々のご尽力もあり、2008年の打上げから設計寿命の5年を超えて、現在は後期利用の段階にあります。しかし、「きずな」はまだまだ元気であり、今後も活躍してくれると期待しています。
 防災利用の分野において、これまで東日本大震災などの実災害や防災実験等、「きずな」をご利用いただいた方々からは、「きずな」の通信環境は多くの場面で地上の高速回線と比較しても遜色ないという評価を頂いています。



 これまでの防災実験への参加で強く感じたことなど教えてください。

『人を救おうとする信念です』

 私がこの仕事を担当するまで“防災”に関する知識や意識が希薄であったことに気が付きました。東日本大震災で活動されたDMAT隊員や医師会の方々の救命活動や、その手段としての非常時通信確保に関する強い信念に、頭が下がる思いでした。今では、海岸線や低地を移動する際、小高い部分を見ると避難場所や避難経路をイメージするようになってきました。
 JAXAは研究開発を行う機関ですが、上述のような経験を踏まえ、研究開発衛星の「きずな」を防災でも有効活用できるよう、最大限貢献していきたいと考えています。



DMAT隊員による「きずな」地球局設置訓練


日本医師会実験での「きずな」を利用した
テレビ会議の様子



 そのような意識の下、防災実験では何を心がけていますでしょうか。

『迅速に活躍できるようにすることです』

 災害時に「きずな」を迅速に利用可能にすることです。近年、民間の通信事業者の方々の多大な努力もあり、携帯電話回線等の復旧に要する日数は確実に短縮していると思います。しかし、災害発生直後に被災地に高速通信環境を構築するためには、発災からの情報連絡体制と輸送手段の確保が重要となります。
 ヘリ等、道路状況に左右されない輸送手段は重要ですが、ヘリでの地球局輸送には制約も多く、また自衛隊や自治体との協力が不可欠となります。このような課題を超え、災害時に必要なサービスを迅速に提供できるように努力していきます。



徳島県実験時の「きずな」地球局の輸送風景
(左:陸上自衛隊ヘリ 右:「きずな」機材搭載の様子)


 今後「きずな」は何を目指すのでしょうか。

『防災インフラとしての通信衛星に向けて』

 将来の課題として「きずな」のような高速通信衛星が恒久的に災害時に活躍できるようにする必要があります。JAXAのような宇宙・航空に関する総合的な手段を有する機関が、衛星通信はもとより衛星観測画像や無人・有人航空機の活用も視野に災害時の運用方法を検討すべきと思います。そして、実際に災害時に機能する通信インフラを構築・検証し、それを国または国に準ずる機関が利用する構図が必要だと考えます。
 また、これまで「きずな」は国内災害への対応を中心に考えておりましたが、昨年のフィリピン台風被害での国際救助活動を見て、アジア圏で災害が発生した場合の通信インフラ確保も大変重要なことが判りました。今後は、アジアのほぼ全域で高速通信可能な「きずな」の特徴を活かし、アジアの防災支援にも貢献できるよう検討も進めていきます。