宇宙航空研究開発機構

突撃!きずな実験レポート 第23回(2014.02.25)

第23回目は緊急医療活動(特に広域医療搬送)訓練において『きずな』を利用した防災利用実証実験を実施しました国立病院機構災害医療センター厚生労働省DMAT事務局の大野様にお話を伺いました。

災害医療の現場を支える衛星通信

国立病院機構災害医療センター 厚生労働省DMAT事務局 災害医療技術員 大野 龍男(おおの たつお)
国立病院機構災害医療センター 厚生労働省DMAT事務局
災害医療技術員
大野 龍男
大野 龍男(おおの たつお)
1999年    国際協力機構国際援助隊事務局 調整員
2005年12月  国際協力システム アフガニスタン 駐在員
               パキスタン 駐在員
2008年11月  国際赤十字連盟  パキスタン 駐在員
2010年8月   厚生労働省 DMAT事務局 災害医療技術員
 災害派遣医療チーム(DMAT)の活動内容を教えてください。

『大地震や大事故等の災害時に被災者の生命を守るため、被災地に迅速に駆けつけ、急性期(おおむね48時間以内)に活動が開始できる機動性を持った、救急治療を行うための専門的な研修・訓練を受けた災害派遣医療チームです。』

 阪神・淡路大震災で災害医療について多くの課題が浮き彫りとなり、この教訓を生かし、各行政機関、消防、警察、自衛隊と連携しながら救助活動と並行し、医師が災害現場で医療を行う必要性が認識されるようになりました。現在では、現場の医療だけでなく、災害時に多くの患者さんが運ばれる、被災地の病院機能を維持、拡充するために、病院の指揮下に入り病院の医療行為を支援させて頂く病院支援や、首都直下型、東海、東南海・南海地震など想定される大地震で多数の重症患者が発生した際に、平時の救急医療レベルを提供するため、被災地の外に搬送する広域医療搬送など、機動性、専門性を生かした多岐にわたる医療的支援を行います。



 平成24年より緊急時に備えて「きずな」地球局の操作訓練を実施していますが、災害医療の通信手段として「きずな」に着目した理由を教えてください。

『東日本大震災の際に岩手、宮城、福島、茨城などの各県に派遣されたDMAT隊との通信に支障があり、より安定した高速通信の必要性を実感しJAXAの「きずな」にたどりつきました。』

 被災地での通信手段の確保については、DMAT研修の中でも重要な位置づけであり、実際にインマルサットやイリジウム、ワイドスターなど市販の衛星通信機器を使って行っています。また災害時にはEMIS(広域災害救急医療情報システム)を使って被災した都道府県を越えて医療ニーズと資源の管理を行います。
 被災地内に設置される対策本部やSCU(ステージングケアユニット:広域搬送拠点臨時医療施設)などでは一度に多くの端末でEMISにアクセスすることや、テレビ会議による情報交換も行うため、より高速の衛星によるデータ通信手段が必須です。



TV会議利用


EMIS利用



 被災地での通信手段について、特にどのような点が重要でしょうか。また、現状の災害医療の通信手段に課題があれば教えてください。

『被災地では勿論、既存のインフラに左右されない独立した、通信手段の確保が望まれます。また通信は発災後すぐ必要となるため、空輸も考慮した、簡易で軽量且つ使いやすい物が望まれます。』

 東日本大震災では既存のインフラは軒並み破壊され復旧には時間がかかりました。この為地上のインフラに左右されない衛星通信は災害時こそ有用だと考えます。また「きずな」はクローズドの衛星で多数の利用者が使用する市販の衛星通信と違い輻輳が無く安定している。現在DMAT隊員に対して「きずな」地球局の設置訓練を行っていますが、設定が少し難しく、また軽量とは言えないため運搬方法が制限されると考えます。高速通信の確保は発災後早期に必要となるため、現在の車両輸送のみならず、ヘリコプター等による地球局の空輸も検討する必要があると考えます。



地球局設置訓練


政府広域医療搬送訓練



 「きずな」や将来の通信衛星への要望はありますか。それらが実現する事により、災害医療はどのように変わるとお考えですか。

『今後も災害医療の現場での衛星による高速データ通信は必須であり、高速でより安定した、簡易な衛星通信機器の開発が望まれます。』

 まず、「きずな」のような高速データ通信可能な衛星が将来的にも使えるようにしてほしい。「百聞は一見にしかず」とあるように、今後災害医療現場からの情報発信は画像や映像になっていくと思われます。このために高速なデータ通信が必須となります。これが可能になれば、現場と指揮所との意思の共有が可能となり現場の負担が軽減できると考えられます。短期間で多くの情報交換が必要となるため、常に安定して通信できることも重要です。
 また、関東のDMATを中心に現在年3回の「きずな」地球局の組立・設置・運用訓練を行っていますが、今後全国のDMATに対し訓練を行い、実災害でも使用可能な状態にしたいと考えています。