宇宙航空研究開発機構

突撃!きずな実験レポート 第14回(2011.09.16)

第14回目は、運行中のフェリー「さんふらわあ きりしま」にJAXA船舶実験局を搭載し、「きずな」を用いた航行中船舶における海洋ブロードバンドの実現性を実験していただいている、株式会社フェリーさんふらわあ常務取締役の藤後様にお話を伺いました。

『海上におけるデジタルディバイド解消への一歩』

株式会社フェリーさんふらわあ 常務取締役 藤後靖男
株式会社フェリーさんふらわあ
常務取締役
藤後靖男
藤後靖男(とうごやすお))
1975年 東京商船大学卒業後、株式会社 商船三井に入社。
2005年 株式会社 商船三井を退職し、
株式会社ダイヤモンドフェリー船舶部長に就任。
2011年株式会社フェリーさんふらわあ常務取締役に就任。

 現在運航中のフェリー「さんふらわあ きりしま」などの洋上船舶におけるインターネット環境はどのような状況でしょうか。また、課題があればお聞かせください。

『通常の連絡は、船舶電話・FAXを利用しています。』
                    

 陸から航海中の船舶、または航海中の船舶から陸への連絡手段は、現在のシステム設備上、電話かFAXなど従来のアナログ回線での連絡という縛られた環境で行われています。

 設備投資を行えば、衛星によるインターネット回線を船舶に実装できますが、企業である以上、コスト面を考慮せざるを得ません。

 また、高コストに見合うだけの恩恵を受けられるかという疑問符が残るので、現状の通信環境に甘んじているのが現状です。

 去る5月24日~26日に「さんふらわあ きりしま」に船舶実験局を据付け、「きずな」(WINDS)経由の海上ブロードバンド通信実験を実施いたしましたが、この実験を実施することになった経緯を教えてください。

『弊社の社員がJAXAに連絡したことから始まりました。』

 私の担当している部署の社員が、海洋ブロードバンドについて調べていると、JAXAの「きずな」を知りJAXAに連絡したことから、今日に至っていると聞いています。

 実験まで実施できるようになったのは、弊社の企業理念が「日々新たに自己を啓発し、発揮します」となっています。更に、企業である以上、地域社会に如何に貢献できるかという事もありますので、意義ある実験に協力させていただくということになったと思います。


 海上ブロードバンド通信実験では「きずな」(WINDS)通信回線による「さんふらわあ きりしま」と神戸本部間でハイビジョンテレビ会議や無線LANによるインターネット環境をご利用いただきましたが、どの様な印象を持たれたでしょうか。

『安全運航の更なる高みへ』

 船舶を運航している以上、自然を相手にしている商売です。

 自然は、日々刻々と変化しています。現状の電話やFAXで十分対応できていますが、テレビ会議を使って、相手側の表情や置かれた環境をリアルタイムで高画質映像として見られる事は、判断する側にとってこの上ない判断材料になります。そのことが、気象海象による海難事故防止に役に立つのではないでしょうか。同時に航海中でのインターネット環境があることで、船舶側は時と場所を選ばずに、気象海象のデータを自ら取得でき現場サイドでの判断材料取得による安全運航も忘れてはならないと思います。

 海上ブロードバンド通信実験の結果を踏まえて、今後「きずな」でどういった利活用を考えられていらっしゃいますか?

『インターネット環境を利用した複合的な利用』

 陸にある運行管理部門から船側に、気象海象に関するデータを送信します。送られてきたデータに基づき船側が航行する航路を判断します。双方で判断された航路を航行した場合における、気象海象の影響による航行速度と燃料消費量などの情報をリアルタイムに知り、データを蓄積し解析することが出来れば、安全で地球環境にやさしい運航体系が行えると思います。

 そういった、陸海協調による情報の集積解析を行う利用法が考えられます。

 近い将来、外洋航行中の船舶から「きずな」のようなブロードバンド通信が実用になった場合の進展・展望をお聞かせください。

『海上における情報化社会の到来』

 必要な情報を収集し集積する。集積した情報で物事を判断する。こういった事が、リアルタイム大容量で行えるようになれば、今後の船舶業界は安全かつ環境にやさしい輸送機関になると思います。

 また、外洋(特に外航)を航行する船舶の乗組員は、一旦船に乗ってしまえば、最低でも半年は、陸との関係が無くなってしまいます。そういった事情で船に乗りたがらない若年層が増えていると聞いています。

 実現するためには、手軽で大容量の通信が可能な船舶地球局の整備が必要になると思います。