突撃!きく8実験レポート 第2回(2015.03.26)

第2回目は「きく8号」を利用した降灰量・降雨量データの伝送実験を実施しました、土木研究所の藤村様にお話を伺いました。

『火山噴火時のデータ伝送をより確実にする「きく8号」』

独立行政法人土木研究所 土砂管理研究グループ火山・土石流チーム 主任研究員 藤村 直樹
独立行政法人土木研究所
土砂管理研究グループ火山・土石流チーム
主任研究員
藤村 直樹
藤村 直樹(ふじむら なおき)
平成17年度 国土交通省入省
平成26年度より現職

 土砂管理研究グループ 火山・土石流チームの主な研究内容を教えてください。

『豪雨・地震に起因した天然ダムや火山噴火の影響を受けた土砂移動現象やそれらによる災害の防止・軽減に必要な技術を研究しています。』

 当チームは豪雨・地震に起因した天然ダムや火山噴火の影響を受けた土砂災害に対して、現場への効果的な技術支援が行えるよう、発生箇所、規模、被害範囲の予測手法を開発するとともに、センサーを活用した発災時の緊急的な調査・監視手法の研究を行っております。
 平成23年に土砂災害防止法が改正され、天然ダムの決壊に伴い発生する土石流や火山噴火に伴い発生する土石流に対して、国がその発生によって被害を受けるおそれのある区域や被害が生じるおそれのある時期の情報を発表することとなりました。当チームで取り組んでいる研究は、これらの発表に必要な緊急調査を今後も高度化していくにあたり、重要な位置づけになるものと考えております。


 土木研究所殿が開発した自動降灰・降雨量計のことを教えてください。また、自動降灰量・降雨量計から収集されたデータ(降灰量・降雨量)はどのように役立てられますか。

『火山灰の量や降雨を無人で連続しており、火山噴火時の危機管理に活用されることが期待されています。』

 火山噴火活動に伴い降下した火山灰は生活や社会基盤に影響を与えるだけでなく、それらに覆われた渓流では、その後の降雨により土石流が発生しやすくなることが知られています。そのため、その分布範囲や堆積量を迅速かつ精度よく推定することは防災上重要なテーマとなります。しかしながら、火山活動時は、人が近づいて観測を行うのに危険を伴うだけでなく、アクセスも容易でなくなること想定されます。
 そのため噴火中に極力人間が近づくことなく、火山灰の堆積重量・厚さや雨量を観測する手法として、自動降灰・降雨量計が開発されました。
 火山灰の情報は火山灰が厚く堆積し、土石流が発生しやすくなっていると考えられる渓流の把握や降雨量からは、土石流の発生の危険性が高まっているかの判断に活用されることが期待されます。



自動降灰・降雨量計


 今回、桜島に設置した自動降灰・降雨量計のデータを「きく8号」で伝送しましたが、実験目的を教えてください。

『火山噴火時における自動降灰・降雨量計などの現地観測データの伝送が可能か実証し、今後の噴火時の活用を目的に実験を行っています。』

 緊急対策の実施や警戒避難体制の構築のため、火山噴火活動時において、土石流の発生の危険が高まっている渓流を把握し、火山灰の堆積状況の動態を把握することが必要です。
 このため、降灰や降雨について連続観測を行い、その情報を何らかの通信手段を用いて随時入手することが重要となります。たとえば、噴火時に新たに観測機器を設置して情報を送信するには、携帯電話の通信網を用いることが考えられます。しかしながら、大規模な噴火時には、地上の通信設備の損傷等により通信ネットワークが寸断されることも想定する必要があります。そのときの通信手段の確保として着目したのが衛星回線を利用したデータ伝送です。
 「きく8号」の実験では、連続観測を行っている降灰や降雨の状況のデータの伝送が衛星を活用して伝送可能であることを実証し、今後の噴火時のデータ伝送手段として活用することを目的に実験を行っています。



桜島に設置した自動降灰・降雨量計と「きく8号」超小型端末


 実験の結果はいかがでしたか。また、何か今後の課題があれば教えてください。

『データ伝送の手段としての有効性は確認できておりますが、噴火の規模が大きい状況下での伝送がどの程度可能か把握したいと考えております。』

 データ取得率は、過年度の実験では10分単位のデータで96%を越え、時間単位では100%に達しており、データ伝送手段として有効であることが確認できました。
 ただし、いずれも比較的降灰の影響が小さいと考えられる状況下での通信であったことから、今後は噴火の規模が大きく降灰の影響が大きい状況下での伝送がどの程度可能であるのか把握したいと考えております。


 現在の通信環境に課題はありますでしょうか。また、将来の通信衛星に期待されることは何でしょうか。

『火山噴火だけでなく、そのほかの災害の厳しい通信環境においても確実に観測データを入手し、それらを用いた災害の発生予測や減災が実行されることを期待しています。』

 火山だけでなく、大規模な土砂災害を生じさせうる天然ダムなどの調査は、深い山地の中で行われることが想定されます。このような状況下では、危機管理のために行われる現地状況の連続観測のデータ伝送手段の確保が課題となります。
 あらゆる災害対応において、「きく8号」といった衛星を活用したデータ伝送により、厳しい通信環境においても確実に観測データを入手し、それらを用いた災害の発生予測や減災が実行されることを期待しています。