きく8号(ETS-Ⅷ)実験推進ページ

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きく8号の特徴

技術試験衛星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)「きく8号」は,2006年12月18日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット204型により打ち上げられました。ロケットより分離後、4回のアポジエンジン噴射を経て静止軌道に到達、約4ヶ月間の初期機能確認作業を経て定常運用へ移行しました。現在は各種実験運用を実施中です。初期機能確認中に移動体通信用実験機器の一部で不具合は発生しましたが、衛星のバックアップ機能と地上の代替措置により制約はあるものの、ほぼ当初予定通りの実験が可能な見込です。

きく8号は、宇宙航空研究開発機構(JAXA、当時宇宙開発事業団(NASDA))が開発する8番目の技術試験衛星として、今後の宇宙活動に必要となる先端的な共通基盤技術の開発並びに先端衛星通信システム技術開発を通じて社会への貢献を図ることを目的として、情報通信研究機構(NICT、当時郵政省通信総合研究所(CRL))、日本電信電話株式会社(NTT)と共同で開発を行った衛星です。以下に掲げる技術開発並びにそれらの実験・実証を行います。

  1. 3トン級静止衛星バス技術の開発
    2000年代初頭の宇宙活動に必要とされる多様なミッションに対応可能な世界最高水準の3トン級静止衛星バス技術の開発を行います。
  2. 大型展開アンテナ技術の開発
    世界最大・最先端のSバンド大型展開アンテナ技術の開発を行います。
  3. 移動体衛星通信システム及び移動体衛星デジタルマルチメディア同報通信システム技術の開発
    Sバンド周波数における携帯端末による音声・データ通信が可能な静止衛星を用いた移動体衛星通信システム技術及びコンパクトディスク(CD)並みの高品質な音声や画像の伝送を可能とする移動体衛星デジタルマルチメディア同報通信システム技術の開発を行います。
  4. 衛星測位システム基盤技術の開発
    高精度時刻基準装置を用いた測位等に係わる基盤技術の開発を行います。

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衛星の概要

きく8号の外見的特徴は、縦横約2.4×2.5m、高さ約7.3mの構体に、展開時の大きさ約17×19mの大型展開アンテナ反射鏡と展開時の長さ約19mの太陽電池パドルをそれぞれ2基搭載し、全展開時の大きさは約40m四方に及ぶ、世界最大級の3t級静止衛星です。

ETS-Ⅷ概観図

次に技術的な特徴として、きく8号の主要諸元を表1に、開発技術の関連を図2に示します。きく8号のミッション要求を達成するための、大型展開アンテナをはじめとした実験ペイロード質量は約1.2tを上回ります。これは過去のJAXA(NASDA)開発静止衛星であるETS-Ⅵや、COMETSのペイロード質量の2倍にあたります。これらを搭載し、さらに大型展開構造物による従来より数倍大きい軌道上外乱、柔軟構造物の振動抑制姿勢制御等にも対応した、新たな3t級静止衛星バスもまたきく8号の開発項目です。欧米においても、通信・放送衛星の高機能・高性能化要求から静止衛星に対して大型化、大電力化、長寿命化、ペイロード質量増加などの要求があり、これに対応する3t級静止衛星が開発されています。きく8号では、このような動向も踏まえ、バス技術の開発にあたって質量、電力に対する柔軟性、拡張性も考慮した設計を行いました。

ETS-Ⅷ主要諸元
項目 諸元
打上げ 平成18年12月18日
設計寿命 10年(衛星バス)
3年(ミッション機器)
軌道 静止軌道(東経146度)
質量 約3ton(軌道上初期)うちミッション機器は約1.2ton
発生電力 7,500W以上(3年後夏至)
姿勢安定方式 3軸姿勢制御方式
姿勢精度 ±0.05゚(ロール/ピッチ)
±0.15゚(ヨー)
ETS-Ⅷのミッション要求,技術目標,主要技術関連図

きく8号のミッションの一つである移動体衛星通信分野の動向として、これまでは衛星に搭載するアンテナはロケットに収納しなければならないという空間的な制約からアンテナ径が制限されていましたが、展開構造技術の進歩により海外では10mを超える大型の展開アンテナを搭載し、地上の通信端末の小型化や通信速度の向上を図っている例もあります。これに対してきく8号では金属メッシュ鏡面をもつ展開トラス構造のモジュールを14個連結した、世界最大級となる開口13mの大型展開アンテナ反射鏡部(LDR)を開発しました。これはSバンドに対応する高鏡面精度とモジュール数の増加による拡張性を兼ね備えた、世界的にも独特の技術です。打上状態(LDRおよび太陽電池パドル収納状態)の衛星フライトモデルを図3に、LDRの地上展開試験の様子を図4に示します。

ETS-Ⅷフライトモデル

衛星測位分野においては、GPSによるカーナビゲーションを代表として、その有用性や重要性については広く知られています。米国のGPS以外にも、ロシア、欧州、中国などが独自の衛星測位システムの構築に乗り出しています。このような状況の中で、日本としても重要な衛星測位システムの基盤技術を習得するために、きく8号に測位用実験機器を開発し、搭載しました。

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ETS-Ⅷの受賞した学会賞

きく8号は、その開発技術によって、次の学会賞を受賞しました。

  • 日本機械学会 宇宙工学部門賞 一般表彰(フロンティアの部)受賞
    「衛星バスシステム技術開発」
  • 日本機械学会賞(技術) 受賞
    「きく8号搭載 大型展開アンテナ(LDR)」
  • 日本伝熱学会賞(技術賞) 受賞
    「きく8号搭載 展開型ラジエータ搭載実験機器(DPR)」

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ETS-Ⅷの開発成果の民間活用

人工衛星の開発から生まれる成果は、宇宙だけでなく普段の生活にも活かされています。

「きく8号(ETS-Ⅷ)」の開発に携わった企業が、開発で培った技術を活かして新たな製品を生み出し、身近な分野においてもその技術が活用され新たな産業として躍進しています。

「きく8号(ETS-Ⅷ)」のアンテナ開発から生まれた新しい技術や製品について、第一衛星利用ミッション本部のホームページで詳しく紹介されています。

きく8号のアンテナで利用されている金属メッシュとチューブ
掲載記事

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ポータブル端末、超小型端末について

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、きく8号を用いた移動体通信実験に用いる地上通信端末を開発しました。

可搬型通信端末
  • 衛星通信用アンテナを内蔵
  • 小型軽量、B4サイズ
  • 画像伝送可能な1.5Mbps
超小型携帯端末
  • 衛星通信用アンテナを内蔵
  • 小型軽量
  • バッテリー駆動

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可搬型通信端末

可搬型通信端末
周波数 送信:2.6GHz帯
受信:2.5GHz帯
偏波 送受信とも左旋円偏波
EIRP 20.53dBW(内蔵アンテナ使用時)
伝送レート 64、128、384、512kbps(内蔵アンテナ使用時)
768kbps(外部アンテナ75cmφ折畳式使用時)
1.5Mbps(外部アンテナ1.2mφ径使用時)
G⁄T -10.9dB⁄K(内蔵アンテナ使用時)
寸法・重量 W 374×D 285×H 125mm、約8.2kg
電源 AC100V駆動(オプションでカーバッテリーからの変換器付)
変調方式 π⁄4シフトQPSK
誤り訂正方式 畳み込み符号・ビタビ復号
TCP⁄IP伝送速度改善機能 Sky-X ソフトウェア搭載
外部インタフェース 140MHz帯 IF入出力(搭載交換機実験)
アンテナ端子(外部アンテナ用)
LNA出力(受信電力モニタ用)
外部機器とはEthernetで接続

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可搬型通信端末 通信実験システム

伝送レート ポータブル端末内蔵アンテナ使用時 64、128、384、512kbps
外部アンテナ75cmφ折畳式使用時 768kbps
外部アンテナ1.2mφ径使用時 1.5Mbps
可搬型通信端末 通信実験システム

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超小型携帯通信端末

超小型携帯通信端末
重量 約300g
サイズ D28.5×W78×H174.5(mm)
周波数 端末送信:2.6GHz帯
端末受信:2.5GHz帯
基地局送信:2.6GHz帯
基地局受信:2.5GHz帯
変調方式 PSK
情報レート 端末送信:50(基本)、100、200、400bps
基地局送信:1.6kbps(制御情報、データ)、12.8kbps(データ)
誤り訂正方式 畳み込み符号化・ビタビ復号
端末EIRP -10dBW(送信電力0.1W 想定)
端末G⁄T -30dB⁄K
RFIDチップ 13.56MHz(短波帯)/2.45GHz(マイクロ波帯)
GPSレシーバー 市販品と同等

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超小型携帯通信端末 通信実験システム

伝送レート 基地局 <=> きく8号 1.6kbps、12.8kbps
超小型携帯通信端末 <=> きく8号 50bps、400bps
超小型携帯通信端末 通信実験システム

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